トップページ > 展望プロジェクト > デジタル文化資源の未来

デジタル文化資源の未来

企画者:鈴木親彦 (情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター)
プロジェクト期間:2017年12月1日から2019年11月30日
プロジェクト概要詳細:PDF

本プロジェクトでは、デジタル化された「文化資源」を「文化資源学」においてどう活用するか、研究・講演会・会員間の議論などを通じて考える。

研究会・講演会

背景と目的

「文化資源」という言葉が人口に膾炙し「デジタル文化資源」と称されるプロジェクトも増えてきている。この動きは、国内のみではなく、海外の動きを紹介する際にもこの言葉が使われている。これらの取り組みは非常に重要なものである一方、現在は公開者側の議論が中心となっている傾向もみられる。この状況が続くと、公開目的と利用目的が一対一対応となり、本来は広く活用できるはずのデジタル文化資源が「サイロ」化を起こしていく可能性も考えられる。研究の対象となる場合でも、社会的な活動に還元される場合でも、デジタル文化資源の持つオープン性は、公開者の当初の意図を超えた広がりを持った利活用につながる可能性を持っている。これまで文化資源を主体的に研究してきた文化資源学こそが、研究・社会活動両面からの利用者として、この可能性を積極的に追求すべきである。そのためには、文化資源学において活用できる「デジタル文化資源」の所在およびその活用方法を明らかにする。特定の分野にとどまらない学際的な活用事例を収集する。利用者としての研究者の視点を、デジタル文化資源公開の動きにフィードバックする。

方法

企画者自身の研究活動と、学際的な情報交換・情報収集の2つの方法を取る。

1.応募者による研究活動
美術史学出身で、現在は人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)に所属してオープンデータ活用を推進している状況を活かして、現在公開されているデジタル文化資源を活用した研究を行う。一例として、応募者はCODHでの研究業務としてIIIFを活用した「奈良絵本顔貌データセット」を公開している。これはあくまでも機能のデモに過ぎないが、すでに公開者の意図を超えた新たな使い方の萌芽といえる。

2.学際的な情報交換・情報収集
応募者個人では、そのバックグラウンドの範囲でしかデジタル文化資源を活用できないが、文化資源学会内外への呼びかけで、活用事例を交換する研究会を年間二回を目的に開催する。開催に際しては実際に活用を行っている専門家に依頼し、学会員へひらいた形での研究会とする。またこの研究会は隣接する諸学会や研究分野と協力して行うことも可能である。

期待される成果

2年間の蓄積によって、文化資源学におけるデジタル活用研究の新たな軸を打ち立てることが期待できる。このことを通して、これまでデジタルを巡る活動とは一定の距離があった文化資源学会が、それらの動きを推進する研究団体として重要な位置を占めることが期待できる。また、デジタルアーカイブの推進は、文化資源学にとって重要な博物館・美術館運営にとって今後必須の課題となる。従来の文化資源学の対象にとっても、プロジェクトの成果は大きく貢献する。さらに、人文学に立脚した学際研究を展開してきた文化資源学会が、よりひろく情報学、図書館情報学などの分野と新たな連携を深める契機となりえる。


©2002-2023文化資源学会