第92回 弥生の田園を行く遠足「新旧昭和の棟梁と建築家の技を味わう」
日程
- 2025年3月8日(土)14:00-16:30
場所
- 公益財団法人 遠山記念館(埼玉県比企郡川島町白井沼675)
案内人
- 鈴木廣之(文化資源学会会員・遠山記念館館長)
解説者
- 久保木彰一(遠山記念館副館長)、松隈章(文化資源学会会員・聴竹居倶楽部代表理事)
開催趣旨

今回の企画は、埼玉県の中央に位置する比企郡の川島町にある遠山記念館の遠足です。地名は鎌倉時代の豪族、比企氏に由来。記念館は旧遠山家住宅(2018年重文指定)と美術館からなり、ともに旧日興證券(現SMBC日興証券)の創業者遠山元一(1890-1972)がつくりました。

旧遠山家住宅は元一が母美以のために建てた東・中・西の木造3棟の和風建築で、これに長屋門、土蔵、茶室、庭園が付属。東棟は茅葺きの豪農風の平屋、中棟は接客用の大広間のある二階建ての書院造り、西棟は美以の居室用で仏間と茶室つきの数寄屋造りの平屋で、昭和11年(1936)竣工。

建築資材の戦時統制が始まる直前だったため、贅沢な材料がふんだんに使用されただけでなく、当時の最高度の職人技が随所に見られます。設計は室岡惣七、大工棟梁は中村清次郎。元一の弟遠山芳雄が総監督として資材の調達などにあたりました。庭園は回遊式で、設計は龍居松之助。最近、新たに設計図が発見されました。


美術館は昭和45年(1970)の竣工。建築家今井兼次(1895-1987)の最後の作品です。高床式、切妻屋根、瓦葺きの鉄筋コンクリート造りで、内外装にキリスト教会を思わせる装飾意匠が凝らされています。今井兼次と遠山元一のつながりは昭和33年(1958)に開館した長野県安曇野の碌山美術館が始まりです。彫刻家荻原守衛(1879-1910、号碌山)を顕彰する美術館建設のための寄付募集に応じた元一と、昭和32年(1957)に竣工した展示施設碌山館を設計した今井兼次との縁はこのときに結ばれ、また二人ともキリスト教の信者であったため、美術館の設計が元一から今井に依頼されました。
当日のスケジュール: 14:00現地集合(長屋門前)、美術館見学、旧遠山家住宅見学(中棟大広間の雛段飾りの見学を含む)、庭園、自由見学、16:30現地解散(自由解散) 当日は雨模様ながら、16名(案内人、解説者を含む)が参加し、解散後、東武バス(04系統)で川越へ移動、有志による懇親会を行ないました。
