第91回 行く秋の遠足「<原爆の図丸木美術館>に<原爆の図丸木美術館>を見に行く」
日程
- 2024年10月12日(土)13:00〜15:00
場所
- 原爆の図 丸木美術館
案内人
- 春日恒男(文化資源学会会員)
解説者
- 岡村幸宣(「原爆の図 丸木美術館」学芸員、専務理事)、齋賀英二郎(建築家、wyes architects) 、八木香奈弥(建築家、wyes architects)
開催趣旨
本遠足は、2021年7月3日の番外編「『原爆の図 丸木美術館』をオンラインで訪ねる」の時に予告した本番編にあたるものです。コロナ禍中の番外編ではオンラインで実施しました。しかし、今回の本番編では「遠足」という言葉の通り、参加者の皆さんご自身の「足」で現場を思う存分歩き回っていただきます。
「原爆の図 丸木美術館」とは、丸木位里(1901-1995)と丸木俊(1912-2000)による共同制作「原爆の図」の常設展示を中心とする私設美術館です。
1967年、同館は「原爆の図」を常設展示するために、たった2部屋の平屋の建物から始まりました。その後、増改築を繰り返した結果、現在は、鉄骨造りや木造など五つの建物をつないでいる「つぎはぎの美術館」(丸木俊の言葉)という独特の存在感を持つ建築になっています。しかし、57年の歳月を経た現在、老朽化により作品保存にも支障をきたすようになったため、来年の2025年(被爆80周年の年)夏には休館に入り、秋から改修工事に着工する予定です。そして、2027年春にはリニューアルオープンをめざしています。
本遠足では、学芸員の岡村幸宣さんに加えて、改修計画を担当されたお二人の建築家(齋賀英二郎さんと八木香奈弥さん)にご参加いただきます。お二人には館内をご案内していただきながら、現在の建物の見どころと改修計画のポイントを解説していただく予定です。ちなみに齋賀さんは富岡製糸場の西置繭所のリニューアルで日本建築学会賞を受賞された建築家でいらっしゃいますが、この改修計画に当たり以下のように述べられています。
「原爆の図丸木美術館は、丸木位里、丸木俊(赤松俊子)が、《原爆の図》を展示するために建設し、ふたりの存命中から度重なる増改築を経て拡張と変化を続けた稀有な美術館です。
現在、絵画制作の現場であり作家の生活の場でもあった建物を調査しながら、改修計画を進めています。
建物を調査すること。それは、破損や劣化を確認し、改善の必要な箇所を見つける行為であると同時に、建設からこれまでの間に生まれてきた、不可思議なパーツや脆弱なポイント(変化のかけら)も含めて、さまざまな部位に触れ、めでたり、いつくしんだりして、建物の癖を見つける行為でもあると私たちは考えています。
癖をつかんでから、こんどは、作品とともに変化を続けてきた美術館の次なる姿を思い描いています。
改修計画では、ちりやほこりに埋もれた時間の層を見つけ出してハイライトして、かつて流れたかもしれない時間に再び接続しながら、美術館が、これからの20年、30年を生き抜いていく姿を表現することを目指しています」。
丸木美術館の建築は公的な「文化財」ではありません。しかし、長い時間のなかでさまざまな人の手が加わり、時間の層が堆積しているという意味では、様々な可能性を秘めた「文化資源」といえるでしょう。この小さな美術館がどのように変貌し、それはどのような未来につながっていくのか。建築家と学芸員の方々と館内を歩き回りながら、皆さんと共に考えてみたいと思います。
なお、現存の建物は来年の夏で見納めになります。その姿はもう二度と見ることができません。その意味でも今回の遠足は貴重な機会となるでしょう。
当日のスケジュール:
13:00〜15:00 館内ツアー(岡村幸宣、齋賀英二郎、八木香奈弥)
あえて細かい時程は作りません。13時から15時まで(途中、適時に休憩をはさみつつ)解説者のお話を伺いながら適時に質問したり、お互いにおしゃべりしつつ、気楽でゆるやかなツアーを予定しています。
備考:
遠足当日、同館では常設展とともに企画展「菅亮平 Based on a True Story」(7月20日〜10月14日)が実施されています。とりわけ、今回の企画展は、広島平和記念資料館所蔵の被爆再現人形を題材としたリサーチ・プロジェクトであり、その展示をめぐって賛否両論を巻き起こした被爆再現人形を通し、歴史継承のメソッドについて再考を促す刺激的な取り組みです。
常設展や企画展をゆっくりご鑑賞されたい方は、早めにお越しいただいてご自由にご鑑賞いただいてもけっこうです。ただし、同館周辺には飲食店はありません。昼食は各自ご用意いただき、館外の休憩場所(館内は飲食禁止)でお願いいたします。
また、同館は都幾川の畔に立地し、豊かな自然環境に恵まれています。早めにお越しいただいて周囲を散策されるのも一興かもしれません。