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第78回 新春・大阪!横行自在の遠足 「美術館と煎茶室、古陶磁で現代を読み直す」

日程

  • 2019年1月13日

案内人

  • 宮川智美(大阪市立東洋陶磁美術館学芸員)

解説者

  • 佃一輝(一茶庵宗家)、佃梓央氏(一茶庵宗家嫡承)、出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館館長)、宮川智美
サンプルイメージ

 古い時代の作品は、いつも現代的な意義を読み直されて、次の創造の源泉とされてきました。  美術館には、多くの名品が収蔵され展示公開されています。大阪市立東洋陶磁美術館の企画展「オブジェクト・ポートレイト Object Portraits by Eric Zetterquist」は、ニューヨークを拠点に活動するエリック・ゼッタクイストの展覧会です。本展は、彼が当館の所蔵作品を撮影し、制作した平面作品を、被写体となった陶磁器とともに展示します。つまり現代美術の展覧会であり、かつ陶磁器の展覧会であり、それらの相互の関係性を示す展覧会となります。所蔵作品の陶磁器は、通常はそれ自体が芸術として鑑賞される対象ですが、ここでは素材として現代美術の創造を促し、コレクションの高度な「活用」の一例と言えます。

 一方煎茶室でも、美術品は設えとして、亭主の意図を伝えるために用いられます。茶会のテーマに沿って、各作品は時に見立てられ、時に取り合わせられた作品と文脈づけられることで、新たな現代的意味を創造する、文字通りの道具とされます。今回は文人趣味の煎茶を今に伝える、一茶庵宗家の煎茶室(登録有形文化財)において、宗家の佃梓央氏の案内のもと、煎茶における設えを体験します。

 今回の遠足では、「古美術」というリソースの「活用」を、美術館と煎茶室という異なるソフトの中で体験します。

報告記事宮川智美 MIYAGAWA Tomomi(大阪市立東洋陶磁美術館学芸員)

 今回の遠足では、美術館と煎茶室という異なる場(ソフト)の中で、古美術という文化資源がどのように活用されるのかを体験しました。

サンプルイメージ  まずは大阪市立東洋陶磁美術館に集合し、企画展「オブジェクト・ポートレイト Object Portraits by Eric Zetterquist」を参観しました。本展では、ニューヨークを拠点に活動するエリック・ゼッタクイストが、所蔵作品を撮影して制作した平面作品を、被写体となった陶磁器とともに展示しています。所蔵作品の陶磁器は、通常はそれ自体が芸術として鑑賞される対象ですが、ここでは素材として現代美術の創造を促し、コレクションの高度な「活用」の一例と言えます。  古陶磁を資源として捉えることについて、簡単に問題提起がなされた後、宮川の案内のもと展示室で作品を観覧しました。これまでに同館を訪れたことがある参加者も多く、見慣れた所蔵品の思わぬ表現のされかたに「陶枕!?」と驚きの声が聞かれました。観覧後に改めて、ゼッタクイスト氏の作品の位置付けについて解説がなされました。


サンプルイメージ  その後、京阪電車を利用して、大阪城を横目に見ながら一茶庵へ向かいました。一茶庵は、江戸時代の後半から文人趣味の煎茶や花、絵、書、料理などの芸術文化を今日に伝えており、一茶庵宗家の九如艸堂は嘉永元年(1848)創建の煎茶室として国の登録有形文化財です。

サンプルイメージ  ビルの谷間の露地を進み、煎茶室に入ると、先ほどまで美術館に展示されていたゼッタクイスト作品が床の間に。お道具は、白磁の碗や漆の角盆などの、白と黒、そして丸と四角で取りあわせられた「オブジェクト・ポートレイト」仕様です。佃梓央氏は、おもむろにゼッタクイスト作品を回転させ、抽象画としてはどの角度がしっくりくるのか、と参加者に問いかけました。美術館では、完成されたものとして鑑賞してきた作品が、角度を変えて見ることで「山水画」「モンサンミッシェルが燃えている!」と異なる見方が口々に聞かれます。これをきっかけに、作品制作の元となった陶磁器との関係や、作家の意図について参加者を交えたディスカッションが始まりました。佃一輝宗匠にもご参加いただきながら、床の間には「両腋起清風」という一行書、また日本の近世南画のお軸が次々と掛け替えられ、ゼッタクイスト作品との取り合わせによって生じる新たな文脈について会話を楽しみました。途中、図らずも巨匠の中国絵画が登場して一同騒然としつつも、佃梓央氏のお点前による、舐めるほど微量の甘く美味しいお煎茶をいた抱きながら、「文人サロン」としての煎茶室での美術作品の活用を体感しました。

行程

サンプルイメージ

午後1時半 大阪市立東洋陶磁美術館集合、企画展「オブジェクト・ポートレイト Object Portraits by Eric Zetterquist」参観
午後3時半 一茶庵(登録有形文化財)でお呈茶
午後5時 解散

参考:
大阪市立東洋陶磁美術館
一茶庵


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