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第13回 秋麗(あきうらら)の遠足 「 “切手と郵便に見る1945年”および“皇室切手展”の見学」

日程

  • 2005年10月29日(土)

案内人

  • 内藤陽介(切手の博物館)
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 全国切手展<JAPEX>は、東京・池袋のサンシャイン文化会館を会場として開催される日本最大の切手展である。今年は、戦後60年ということにちなみ、1945年にフォーカスをあて、広く世界の切手や郵便物を横断的に紹介する“切手と郵便に見る 1945年”という特別展示を企画している。 
 一方、東京・目白の<切手の博物館>では、11月15日の内親王ご結婚にあわせて、全国切手展の期間中を含め“皇室切手展”を開催する。皇室切手展は、同館1階で10月初より開催の“世界の女王様”展と連動して行われるもので、展示内容としては、(1)世界最初の切手でも女王様だった(イギリスで発行されたヴィクトリア女王の切手に関するコレクション。切手の雛形になったメダルの類も展示)、(2)日本の皇室切手(主として、戦前の日本の皇室に関する記念切手に関するコレクションの展示)の2部構成で展開される。 
 展示品の中には、現存1点から数点という貴重な資料も多数含まれており、歴史資料としての切手や郵便物の面白さを、より多くの方々に理解してもらう上で、絶好の機会となるものと考えている。


行程

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  • 13:30 サンシャイン文化会館(池袋)2階、 全国切手展<JAPEX>受付・チケット売場集合
  • 13:30〜14:50 同展の特別展示「切手と郵便に見る1945年」を中心に見学
  • 14:50〜15:30 切手の博物館(目白)へ移動
  • 15:30〜16:30 皇室切手展の見学


"切手と郵便に見る1945年"および"皇室切手展"の見学内藤陽介

文化資源学会主催の第13回遠足は10月29日(土)、「“切手と郵便に見る1945年”および“皇室切手展”の見学」と題して行われた。案内人は会員の内藤陽介(財団法人・切手の博物館)である。このうち、“切手と郵便に見る1945年”(以下、“1945年”)は、第40回全国切手展<JAPEX05>の特別企画として展示されたものである。切手・郵便(史)の収集・研究においては、A4版程度の大きさの台紙に資料の実物を貼り込み、その周囲に研究成果などを書き込んだもの(リーフ)を一定数集めた作品として構成・展示するというスタイルでの研究成果の発表が重要視されている。<JAPEX>は、こうしたスタイルの研究成果の発表の場として、日本最大の切手収集家・研究者の団体である財団法人・日本郵趣協会が毎年秋に開催しているもので、日本国内のみならず諸外国からも作品が寄せられている。競争部門への出品作品に関しては、専門の審査委員による厳正な審査が行われており、イメージとしては一般的な学会のポスターセッションと査読つきの論文発表をあわせたようなものと理解してもらえればよいかもしれない。

今回の特別展示“1945年”は、本年(2005年)が第二次世界大戦の終結から60周年の節目の年に当たることを踏まえ、終戦の年である1945年に焦点を当て、日本、中国、朝鮮半島、旧南方占領地域、ドイツ、イギリス、アメリカなどの終戦前後の切手や郵便物を展示することで、終戦の諸相を再構成しようというものである。展示は、内藤による背景的な歴史事情に関する概説的な作品と、天野安治(元広島県立尾道高校)の構成による終戦前後の日本および関連地域に関する切手・郵便史の専門的な作品の2点を軸に、競争・非競争あわせて約40フレーム(1フレームは16リーフ)の作品によって構成されており、その概要は2006年3月に刊行予定の『切手と郵便に見る1945年』(日本郵趣出版・予約限定)に採録されることになっているので、詳細はそちらを参照されたい。

見学は、13:30から会場内の展示前で内藤と天野が行った“1945年”の作品解説にあわせて行われた。解説は、内藤、天野の順で行われ、その後、15:00までは各自、会場内の他のコーナー(一般の競争展示や切手商による即売ブースのコーナー)を自由に参観した。ついで、15:00に会場を出発して目白の<切手の博物館>に移動し、同館で開催中の“世界の皇室切手展”を見学した。“世界の皇室切手展”は、会場の博物館が学習院と通りをはさんで向かい側にあることから、11月15日に行われた紀宮清子内親王の結婚にあわせて企画されたもので、(1)世界最初の切手も女王だった:イギリス・ヴィクトリア女王切手、(2)日本の皇室切手、の2部構成となっている。このうち、“世界最初の切手も女王だった”は、1840年にイギリスで発行された世界最初の切手のデザインがヴィクトリア女王の肖像を取り上げたものであったことに注目し、ヴィクトリア朝期のイギリスで発行された、女王の肖像の切手についての専門的な研究・分類のコレクションを中心に展示を構成した。メインとなるコレクションは、この分野の専門家である千葉晋一の出品によるもので、オーソドックスな切手研究の手法を用いて、版式、版面、目打、紙質などのバラエティと切手の使用状況についての研究成果を示したものである。このほか、切手の元になった女王の肖像のメダル(ワイオンのメダル)や切手発行以前の郵便物、切手の試作品などもあわせて展示された。一方、“日本の皇室切手”は、皇室の慶事に際して発行された記念切手のうち、戦前期の天皇・皇太子の結婚に関するものに限定して、1894年(明治27)発行の大婚25年(明治天皇の銀婚式)、1900年(明治33)発行の皇太子(後の大正天皇)結婚、1923年(大正12)発行予定(関東大震災のため不発行)の皇太子(後の昭和天皇)結婚、1925年(大正14)発行の大婚25年(大正天皇の銀婚式)に関する展示が行われた。展示品の中には、切手の印刷原版や記念スタンプの印顆(以上、逓信総合博物館所蔵)、明治天皇の銀婚式ならびに大正天皇の結婚式の様子を描いた錦絵(以上、明治神宮所蔵)、大正天皇銀婚式の記念切手の試刷(製造時の状態で未裁断のもの、個人所蔵)など、資料的な価値の高いものが多数展示された。また、天皇・皇太子の結婚とは直接の関係はないが、1924年に発行の神功皇后を描く5円ならびに10円の通常切手の試作品ならびに海外要人への贈呈用特別シートも展示され、注目を集めた。

こうした展示を前に、案内人の内藤は、展示品の資料的価値・意義を説明するとともに、戦前期の日本政府が、メディアとしての切手をどのように活用し、どのような皇室イ メージを内外に流布させようとしていたのか、著書『皇室切手』の内容をもとに解説。解説終了後、16:30頃には各自流れ解散となった。

<JAPEX>ならびに切手の博物館の両会場ともに、会期中は主催者の予想を大幅に上回る参観者が詰めかけ、特に、内藤が展示解説を行っている時間帯には、その周囲は混雑がひどかった。このため、解説を聞くために集まっていた参加者の中には、人ごみで肝心の切手や郵便物がほとんど見えないこともあり、この点は、改善すべきと案内人として反省したい。ただ、そうしたマイナス面を差し>引いても、今回の遠足を通じて、歴史資料としての切手や郵便物の面白さ、また、その展示の実際など、一般にはなかなか触れる機会のない事柄について、参加会員にも一定の理解を得られたものと考えたい。

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